Original Soundtrack Recording “55 Days at Peking” Dimitori Tiomkin Conducting the Sinfonia of London
『北京の55日 オリジナル・サウンド・トラック』ディミトリ・ティオムキン指揮、シンフォニア・オブ・ロンドン
YS-277
日本コロムビア/CBS COLUMBIA
映画を好んで観るようになってすぐ、古き良きハリウッドの超大作スペクタクル映画の魅力に取り憑かれました。きっかけは小学生の頃、親父に『ベン・ハー』の海戦のシーンと戦車競走のシーンを観せられたことです。金と時間と人間を大量に注ぎ込んで撮影された贅沢な画面の数々には、未来の人間がいくらがんばっても追いつくことのできない、本物の風格があると思います。見世物であった活動写真から始まり、絵画や文学に比べればメディアとしてはずっと後発であった映画が芸術品としての価値を主張することに躍起になっていた時代ならではの産物と言えるでしょう。
で、この『北京の55日』もご多分に漏れず歴史の教科書でも開くような感覚で楽しめる1本で、義和団事件を描いた作品。とはいえこの映画ではアメリカ人とイギリス人が主体となって動いているように描かれているので、これが歴史だと思い込んで観ると良くない面もあるのですが、そういうところもハリウッドです。『十戒』ではエジプト人たちを白人が演じてますし、だったらハリウッドスターがちょんまげ結うような映画もあれば良かったのになぁ(歴史ものじゃないけど、シャーリー・マクレーンが着物に日本髪スタイルで出てくる映画ならあります)。
20年ぶりくらいにチラチラと飛ばし見をしたところ……序曲がとてもカッコ良かったことと、水墨画の絵巻物風なタイトルと、本編終了後に流れる「北京のテーマ(So Little Time)」(唄:アンディ・ウィリアムス)がとても美しく素晴らしかったこと、エヴァ・ガードナーがオバサンに見えたこと、若き日の伊丹十三がそこそこの役で出演していること、それ以外のことはすっかり忘れていました。(20年ぶりですからこれだけ憶えていれば十分ですかね)。でも画面はどこへ飛んでも実に鮮やか。改めて真剣に見直す必要がありそうです。
3時間超えが当たり前のこの手の映画にしては2時間40分の上映時間は比較的見やすいほうです。それでもちゃんと序曲(Overture)と休憩(Intermission)と終曲(Exit Music)という超大作映画ならではのフォーマットを維持しています。さすがですね。ディミトリ・ティオムキンといえば個人的には『真昼の決闘』など西部劇の音楽という印象が強いですが、ミクロス・ローザなどと並んで超大作映画をよく任されていた重鎮作曲家。中国が舞台ということで、オリエンタルな雰囲気をくどくならない程度に含んだ優雅なスコアです。