George Harrison『Somewhere in England』
DHK3492
ジョージ・ハリスンのソロアルバム『想いは果てなく〜母なるイングランド』(なんと叙情的すぎる邦題よ)ですが、これは海賊盤。「内容が地味すぎる」とレコード会社(ワーナー)からダメ出しを食らい、そうこうするうちジョン・レノンが亡くなってしまい…という、波乱万丈なジョージのキャリアのなかでも特に難産だった一作の、作り直し前の内容が収録されています。ジャケット写真も当初予定されていた、ジョージの髪の毛が途中からイギリスの衛星写真になっているという激シブなデザイン。
※2004年のリマスター盤発売時から、曲目はそのままでジャケット写真だけが元に戻りました(タイトルロゴだけオリジナルと変わっています)
実際に発売された盤(レコード番号も同じ)では明るめの曲3つとジョンへの追悼歌「過ぎ去りし日々」が追加され、代わりに4曲がカット。ジャケットは明るいデザインに差し替えられ、曲順も変わっています。たしかにこっちは地味かもしれませんけど、やっぱりこの元のバージョンのほうが好きですね。「イギリスのどこか」というタイトルで、ホギー・カーマイケルの「香港ブルース」のカヴァーから始まるという皮肉の効いた演出はいかにもジョージな発想ですし。
「ホンコン・ブルース」はビートルズ時代にインドに傾倒していた時期を経て、ジョージなりのポップなオリエンタル感を確立した感のあるアレンジが本当に素晴らしいです。メンバーで最初にシンセサイザーを導入しただけあって、使い方も彼が一番上手な気がします。カーマイケルのオリジナルもそうですし、細野晴臣が『泰安洋行』でカヴァーしたときのアレンジとも聴き比べて、同じ曲でもこんなに変わるもんなんだと、音楽の視野が広がるきっかけにもなりました。さしかえられて当時は未発表になってしまった4曲も含めて、全部良いんです。
音質は海賊盤とは思えないほど最高。この内容で発売寸前まで行っていましたから(ジョンとヨーコの『ダブル・ファンタジー』の日本盤を買うと、帯の裏の発売予定リストにこのジャケットが載っている)、業界で出回っていた試聴用のテープからレコード化したのでしょう。