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Chris Montez『Greatest Hits』『ビバ!! クリス・モンテス/ビッグ・ヒッツ』

Chris Montez『Greatest Hits』
『ビバ‼︎ クリス・モンテス/ビッグ・ヒッツ』
AML-57
キングレコード/A&M

ソフトなサウンドにほのぼのとしたヴォーカルを乗せ、聴く者の脳をとろけさせるクリス・モンテスのベスト盤で、彼がA&Mレコードに残した4枚のアルバムから、順に4曲、4曲、1曲、5曲をピックアップした14曲入り。たしか統一ジャケットで同じA&M所属のハーブ・アルパートとティファナ・ブラス、セルジオ・メンデスとブラジル’66、サンドパイパーズにもこんなベストが出ていたような気がします。ただクリス・モンテスの場合、日本では「愛の聖書」(Nothing to Hide、辺見マリの「経験」が歌い出しの部分をそっくりマネしていてこれも最高)がヒットしたくらいであまり国内盤レコードが見つからないので、こういう寄せ集めのベストでも聴けるだけありがたいと買ってしまいます。「愛の聖書」が長く定期的にヒットしていたのか、その後、「愛の聖書」をメインタイトルにして、同じ曲目でジャケットを変えて出たりもしています。これってクリス・モンテスだけかな?

ジャンル的にはよくソフト・ロックとして紹介される人ですが、これがソフト・ロックかというと若干疑問で、イージー・リスニングやラウンジ系の延長と考えたほうが良さそうな気がします。これでさらに好き度が高まっていくとジャズ・ヴォーカルとポピュラー音楽の世界にどっぷりハマってしまうわけですね。個人的にはそういう世界への入口となった盤のひとつです(あとはリンゴ・スターの『センチメンタル・ジャーニー』か)。

14曲の選曲は有名な楽曲優先という感じで、バート・バカラックミシェル・ルグラン、映画音楽にビートルズ、それからアントニオ・カルロス・ジョビンジョニー・マンデル……全体的にのっぺりとしていて面白味がないとも言えるのですが、この手のポピュラー系歌手が歌っていた当時のトレンドが一通り把握できる入門編、という意味では手堅い選曲ではないでしょうか。そういえばリンゴも「慕情」を歌っていましたっけ。

解説はTBSラジオのディレクターで『パックインミュージック』などを担当されていた平川清圀さん。話のツカミに大橋巨泉さんがラジオで語っておられた、「歌手には歌の上手さか、”サムシング “が必要である……」という話をあげて、クリス・モンテスは上手さよりはサムシングのある歌手である、という原稿を書かれています。しかし巨泉さん、「俺はもうジャズ評論家じゃない」なんて言っていた時期があったんですね。ショッキング・ブルーの「ヴィーナス」がヒットした話題が出てくるのでおそらくこの盤が出たのは1969年の後半ということになりますが、この頃にはもう『ゲバゲバ90分』の司会もやっていましたし、つまり完全にタレント業に移行した、ということなんでしょう。全然クリス・モンテスと関係ない話になっちゃいましたが、今となってはそういう情報のほうが時代の証言として貴重だったりします。

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