ニューミュージック名盤サブスクで聴ける名盤ガイド

かまやつひろし『あゝ、わが良き友よ』

ムッシュかまやつの代表曲「我が良き友よ」「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」の2曲を収録したアルバム。「我が良き友よ」は吉田拓郎の提供曲。「ゴロワーズ~」はタワー・オブ・パワーのとのコラボ、それ以外の収録曲も当時破竹の勢いであった後輩若手アーティストからの提供曲である。参加したお友だちの華やかさも当時大きな評判になっていたリンゴ・スターのソロアルバムを日本で実現したような、そんな一作だ。

 冒頭の「仁義なき戦い」は作詞:松本隆/作曲:細野晴臣のコンビ、「お先にどうぞ」山下達郎を含む大瀧詠一ナイアガラ一派、「サンフランシスコ」加藤和彦「DARLING」りりィ(デュエットも)、  「OH,YEAH(小学校低学年用)」遠藤賢司「根なし草」はかぐや姫南こうせつ伊勢正三「ロンドン急行」井上陽水「道化役」「男の部屋」「何とかかんとか」ガロ堀内護日高富明と、この時点でのニューミュージック界隈の立役者がほぼ網羅できているというすごさ。今作には不参加だが、ムッシュはユーミンとのつながりも深いわけで、その立ち位置にムッシュがいるか/いないかで、日本のポップス史は大きく違ったものになったのではないだろうか。

 ムッシュのスパイダース解散後のキャリアとしては、グループ時代からのフィリップス・レーベル、本作での東芝/エキスプレス、そしてトリオ・レコードへと続いていくわけだが、「我が良き友よ」の大ヒットでイメージが固定化することを恐れたムッシュが東芝での活動をフェードアウトさせて、あまり商売っ気のないトリオへ移ってしまったことで、東芝でのアルバムがこれ一作で終わってしまったことは残念でならない。確かに本作の後に出た東芝でのシングルはやはり拓郎が提供した「水無し川」などフォーク系の楽曲が続いているのは先のムッシュの懸念の通りで、豪華メンツ大集合での作品作りはこの一回限りの技だったのかもしれない。

 ちなみに今となっては大名曲扱いの「ゴロワーズ~」はこの時点ではシングルB面の地味な曲。再評価は90年代の小山田圭吾ら渋谷系の登場まで待たなければならない。タワー・オブ・パワーに共演を申し込んだものの、曲を作っているヒマがなかったムッシュがとりあえず先にコード進行だけを作って演奏をしてもらい、あとからヴォーカルを入れながらメロディを作っていった……などの逸話はムッシュの著書『ムッシュ!』で語られていて一読の価値あり。タワー・オブ・パワーのメンバーは完成したバッキングトラックを聴きながら、「じゃあここからが歌だよ」と細かく教えてくれたらしい。やさしい。

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