サブスク捜索隊

Colin Blunstone『One Year』 邦題:コリン・ブランストーン『一年間』

 ゾンビーズのリード・ヴォーカリスト、コリン・ブランストーンのファースト・ソロ。『ふたりのシーズン(Time of the Season)』が大ヒットしたその時はすでにグループは解散状態でブレイクもなにもあったものではなく、今ではすっかい名盤扱いの『オデッセイ・アンド・オラクル(Odessey and Oracle)』も悲惨な状況下でどうにか形になったという、ある意味捨て鉢的な作品でした。本作はそれからしばらくして、一旦音楽業界から足を洗っていたコリンが元メンバーのロッド・アージェントクリス・ホワイトと再集結して作ったものです。「She Loves the Way They Love Her」「Smokey Day」はゾンビーズ末期に録音されて未発表になっていた曲で、コリンは解散を待たずにグループを脱退していたために、ロッドのヴォーカルで録音されていたもの(1974年の編集盤『Time of the Zombies』…未CD化で初公開)。ここでは晴れてコリンのヴォーカルで再録音されました。

 バックは主にロッドがゾンビーズ解散後に結成した「アージェント」のメンバーが務め、ゾンビーズ時代とは違った落ち着きのあるサウンド、そしてストリングスだけをバックにしたストイックなサウンドの2本立てで構成されています。そして、それらと絡みつくコリンのヴォーカル。ゾンビーズ時代からさらに艶やかさを増し、時に儚げに、時にセクシーに響く、繊細な彼の歌声が本作のすべてといってもいいでしょう。アルバム全体で統一されている深い霧のようなエコーも効果的です。

 彼のロッドの作品以外だと、「Mary Won’t You Warm My Bed」はマンフレッド・マンのマイク・ダボ、サンドパイパーズのバージョンでも知られる「Misty Roses」は不遇のフォーク・シンガー、ティム・ハーディン作。

 そしてラストを飾る「Say You Don’t Mind」の作者はわれらがウイングスのデニー・レイン。もともとムーディー・ブルース脱退後に結成したエレクトリック・ストリングス・バンド時代 (4人のメンバーに加えてストリングス隊がいたんだそうな。シングル2枚だけ出して解散。映像も写真もロクに残っていない)にリリースしたもの。かろうじて当時のPV的な映像がありましたが、結局ほとんどソロのワンマン・バンドだったのでしょう。デニーがひとりでフラフラしてるだけの内容。曲のほうは豪勢なサウンドなのにサイケデリックという他ではあまりお目にかからない素敵な出来で、デニーの衣装もカラフルだったろうに、モノクロ撮影のせいでメチャクチャ地味な印象という、デニーの「もったいない男の宿命」がこの1点に凝縮されています。

 一方、こちらはコリンのTV出演時の映像。アルバムと同じく弦楽五重奏がバックのこれ以上ない名演。本作からカットされたコリンのシングルはイギリスで15位の中ヒットを記録し、デニーがウイングス以外で残した大きな業績のひとつになっています。

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