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『グリーンランドー地球最後の2日間ー』(2020)【映画のあらすじとレビュー】

『グリーンランドー地球最後の2日間ー』あらすじ

 建築エンジニアのジェラルド・バトラーは、地球の近くに彗星の破片が落ちてくる、ちょっと珍しい天体ショーの生中継があるというので、別居中の妻と子どもと親戚と、テレビを囲んで宴会をしていた。ところがそれは天体ショーなどという生易しいものではなく、落ちてきた破片でフロリダ州が消滅。2日後に本体が落ちてきて、今度はどこに逃げても全生物絶滅、絶対に助からない規模の大災害が起こるという。政府はどうやらそれをあらかじめ知っていたがパニックを恐れてそれまで事実を公表せず、選ばれた一部の国民をシェルターに避難させる計画を進めていた。運よく選ばれし家族となったジェラルドだったが、選ばれなかった近所の人には恨まれるわ、妻との関係は冷え切っているわで家庭を維持できる自信がなく、おまけに滅亡まであと2日しかないのに不運なすれ違いで一家離散トラブル発生。大丈夫か? ジェラルド・バトラー!

『グリーンランドー地球最後の2日間ー』レビュー

 地球滅亡系の映画では珍しく、いわゆる国家中枢にいる人間の描写を徹底して省かれているのが特色。なので、政府が国民を救うためにどうしたとか、被害を抑えるためにどういう対策をとったとか、そういう話は一切ナシ。市井の人々が目の前の大問題にただただ翻弄させられる様子を、こちらはなす術もなく見守ることしかできないという、そんな究極の小市民映画

 高確率で地球が滅ぶとなったとき、街では暴動や略奪が起き、至るところで火の手が上がる。他の似たような映画でもほぼ必ず観るハメになる場面だ。この映画では、車の窓からその様子を見た主人公が、「ま、そうなるだろうな…」とあきらめに近い表情を浮かべる。隕石が落ちて地球が滅ぶということになったら、人間がすることなんて限られている。逃げるとか、死ぬとか、遊ぶとか、暴れるとか。映画を作る人たちはよく何十年も前から同じようなテーマで作り続けられるものだなぁとまったく関心するものだが、この映画ではそうしたあるあるな出来事に対して割とクールで常識的な視点が常に入ってくる。本当に地球滅亡ってことになったら人間はどうなるんだ? という問いかけ。正常な判断力を失った大人がどうやって狂っていき、あるいは正気を保とうとするのか。地球滅亡のプロセスより、こんな滅茶苦茶な話でも大真面目に描かれる人間の描写が面白く、展開から目が離せなくなる。

 良い人もいるし、悪い人もいる、良い人そうに見えて悪い人もしるし、その逆もある。映画を観ている時は誰でも、「自分ならどうする?」と思うだろうが、どういう結論を出してもそれを受け入れてくれるだけの懐の広さがこの映画にはある。

 あさっての朝にたぶん滅亡します、ということが知らされた夜、さっさと諦めてパーティーに勤しんでる人たちの表情の、実に明るく楽しげなこと。それだってひとつの正解かもしれない。万が一生き延びたところで、飢え死しない保証なんかどこにもないものね。

 基本的には性善説の映画ではある。正直者は救われる、やさしい世界の映画だ。残念ながらそれは現実はそうではないし、ホントのホントに常識的に考えれば、たぶん主人公の一家も生き延びることはできないと思う。でも、そこは映画なんだし、希望を持つことは悪いことじゃない。

 ちなみに、妻の父を演じたスコット・グレンはもうこの映画の公開時ですでに80歳。これからそう何本も映画に出るのは難しい年齢になってきたなかで、この映画で名演技を残してくれたことに心から感謝したい。気になった人は彼のフィルモグラフィを調べてみてほしい。戦いに戦いを重ねてきた彼の歴史は、義理の息子役であるジェラルド・バトラーのフィルモグラフィに通じるものがある。彼ら2人が男と男の話し合いをする場面に漂う重さは、もちろん映画の演出も素晴らしかったのだろうし、それを超えるムードもきっとあったのだろう。なかなかに感慨深い。登場場面は少ないが、好青年役のアンドリュー・バチェラーもよかった。調べてみると「インターネットセレブリティ」とのことで、いわゆるYouTubeやInstagramでバズる系の人らしい。人類滅亡という超シリアスな状況下でも観る側をホッとさせてくれる良いキャラをしてました。

映画『グリーンランドー地球最後の2日間ー』の真鍋新一さんの感想・レビュー | Filmarks
真鍋新一による、「グリーンランドー地球最後の2日間ー(2020年製作の映画)」ついての感想・レビューです。
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