3/31に徳間書店から発売された『シティ・ポップとラジカセ 70年代のカセットテープ・カルチャーを振り返る』にて、鈴木茂さんと杉真理さんのインタビューを担当しました。原稿づくりは馬飼野元宏さんと作業を分担した関係で名前が入っていませんが、伊藤銀次さんの取材にも立ち会っています。鈴木英人さんの作品を使った表紙のデザインも雰囲気抜群。カセットテープとラジカセ、そしてFM。メーカーごとに型番を解説したページや『FMステーション』の編集長だった恩蔵茂さんの記事など、一読者としても興味深いことばかりで、リアルタイムの人だけでなく、この時代に興味のある下の世代にも楽しめる内容になっていると思います。
茂さんにはシティポップという言葉が生まれる前、あのサウンドが誕生する瞬間とも言える時期についてお話を伺いました。名盤『ひこうき雲』でキャラメル・ママはどんなセッションを繰り広げていたのか。お話を聴いていて鳥肌が立ちました。この臨場感を少しでも誌面からお伝えできていればと思います。
杉さんにはひとりのビートルズマニアがいかにポップス好きを貫いてアーティストであり続けてきたかをお伺いしました。もともと歌謡曲が強かった日本ではポップスは「売れない音楽」でした。好きなものがに世の中に受け入れられないつらさ。そんな時期を安部恭弘さんや竹内まりやさんらと一緒に乗り越えた青春回想録です。
EPOさんのインタビューもすごく興味深い内容です。それぞれデビューやキャリアの時期は少しずつズレてはいますが、この一冊で採り上げられたアーティストのインタビューを読むことによって、ちょうどよく70年代半ばから80年代までのシティポップのトレンドが網羅できてるんですよね。まったくの偶然なんですけど、すごくマジックを感じます。すでにマニアの間では有名な話も、僕と馬飼野さんがオタクなツッコミ方をすることで、一味違ったお答えをいただけたような気がします。銀次さん、杉さん、茂さん、細かすぎる質問にもやさしくお答えいただきましてありがとうございました。
3月の頭に1982年のシティポップ・ブームについて栗本斉さんにインタビューした『昭和40年男』が出て、それから栗本さんが監修したCD『CITY POP STORY』が出て、そしてこの『シティ・ポップとラジカセ』が出て、ブームというものは波のように押し寄せて来るものなんだなと身をもって実感しています。そしてシティポップの波は形を変えて何度でもやってくる。2023年の春はシティポップの季節になりました。『シティ・ポップとラジカセ』をどうぞよろしくお願いいたします。