
昨年ずっと付きっきりでお手伝いをしていた書籍『野口五郎自伝 僕は何者』が2月21日に刊行されます。五郎さんのお誕生日に合わせたリリース。そして2025年は芸能生活55年目という記念すべき年。五郎さんにお会いしてお話を伺ったのは、2022年の『ギター・マガジン』が最初でした。そのときのインタビューが非常に好評で、それがきっかけとなって今回の自伝の企画が動き出したのだそうです。また声をかけていただけて、本当に感謝、感激……。
改めて五郎さんに長い時間をかけてお話を伺ったり、五郎さんの記憶と実際の記録がどうなっているのかを細かく調査したり。夢のような時間でした。大人が仕事をする姿勢としてあまり褒められたものでないのは十分にわかっているつもりですが、誇張なしにすべてを投げうってこの仕事に全力投球しました。でもそうじゃなきゃ、やれないです。この想いの強さをいくらでも書いてやりたい気分ですが、書けば書くほどヤバい人になってしまうので、個人的な想いはこのへんで。

五郎さんの、歌謡曲歌手やタレントとしてではなく、ひとりのミュージシャン、アーティストとしての業績は、桑田佳祐さんらとの共演などがあったとはいえ、一部のファンやマニアの間にしかまだ知られていないと思います。実際、今回調べてみて初めてわかったことがたくさんあります。五郎さんが初めて打ち明けてくださったことも。歌手の仕事は、特に歌謡曲の世界では、作詞家と作曲家が書いた曲をただ歌うことだけだと思っていました。もちろんそういう方もいます。でも、五郎さんはそうじゃなかった。

これはよくできた音楽ドキュメンタリー映画を観た後に思うことなんですが、ある情報を知ることで、音楽の聴こえ方が変わる。今回の五郎さんの本もそんな情報がたくさん詰まった一冊になりました。昭和30年代のはじめに生まれた男の子が運命的に音楽に目覚め、昭和40年代の半ばに芸能の世界へ飛び込んでいく。そこで感じた世の中の移り変わり、テクノロジーの進歩とそれによってもたらされた危機。輝かしい日々の裏で抱えていた葛藤。そして混迷を増していく現代になにを思い、生きていくべきか――そんなひとりの歌手の壮大なストーリーは、五郎さんのことをよく知らない方でも、きっと楽しんで読んでいただけると思います。
最近、本の値段が高いので、よく映画館で映画を観るときの値段と比べてみるのですが、普通に観に行ったら2,000円。サービスデーに行くと1,300円。で、五郎さんの自伝は3,300円。どうでしょう。新作映画2~3本観るのと同じくらいの充実感はお約束できます。本屋さんで見かけたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。
そしてお知らせサイト用におまけ! Spotifyで作った五郎さんのプレイリストを2種類貼っておきます。
ひとつ目は、昭和の五郎さんの楽曲をシングルB面も含めて、いま聴きなおしてほしい!と思う楽曲をまとめたプレイリスト。したがって代表曲の「甘い生活」や「私鉄沿線」は入っていません。
ふたつ目は、平成以降の五郎さんの楽曲をまとめたもの。実はまだサブスクに入っていない曲が五郎さんには多いのですが、聴けるものからとにかく厳選。ご自身のマルチプレイによってリメイクされた過去の楽曲も入っています。最近の五郎さんがどんなふうに歌っているか、どんな曲を歌っているか。最近の動向がわかるプレイリストになっています。本のお供にぜひお楽しみください。