洋画・ドキュメンタリー映画漬け

『ヒッチコック/トリュフォー』(2015)

和田誠さんのイラストを使用した日本版のビジュアルも素晴らしい。やっぱりそう来なくちゃね。

『ヒッチコック/トリュフォー』
“Hitchcock/Truffaut”
2015年/フランス、アメリカ
Arte France、Artline Films、Cohen Media Group
監督・脚本:ケント・ジョーンズ/脚本・セルジュ・トゥビアナ
配給:ロングライド
出演:アルフレッド・ヒッチコック、フランソワ・トリュフォー、マーティン・スコセッシ、ピーター・ボグダノヴィッチ、ポール・シュレイダー、デヴィッド・フィンチャー、オリヴィエ・アサイヤス、アルノー・デプレシャン、ウェス・アンダーソン、リチャード・リンクレイター、ジェームズ・グレイ、黒沢清

あらすじ:
 映画ファンならご存知の名著『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』の舞台裏を軸に、インタビューの録音テープに残されていたヒッチ先生の肉声や、デヴィッド・フィンチャー、ウェス・アンダーソン、マーティン・スコセッシ、ポール・シュレーダー、ピーター・ボグダノヴィッチ、日本からは黒沢清ら現役監督のヒッチコック・トークを交えて実際の作品を検証するドキュメンタリー。

評:
 『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』……フランスのオタク監督フランソワ・トリュフォーが、スリラー映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督から全作品、全キャリアについて根こそぎ聞き出した超デカくて分厚くて重いインタビュー本。でも最高に面白い。

 例えば、何度も何度も、大事に大事に読んでいた心の一冊が、スクリーンから音と映像をもって、こちらに向かって語りかけてきたとしたらどうだろう? もしかすると、IMAXもディズニーランドも太刀打ちできないくらいのアトラクションになるんじゃないだろうか。だって、ヒッチコックの声が、トリュフォーの声が、内容を暗記さえしたあの本の一節を語りながら、たくさんの名場面を解説してくれるのだ。『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を通った映画好きなら、それはハリポタや指輪物語の実写化よりもはるかに意義あることだと思うはずだし、『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』ほどこうなって(映像化されて)然るべき本もない。こうして映像化されることがすなわち夢の実現、幻の実体化、望んでいた未来なのだ。

 この本を読み耽っていた当時、ヒッチコックの声を熊倉一雄、トリュフォーの声を金内吉男『未知との遭遇』に出演したトリュフォーの声を吹き替えた)の声で脳内再生しながら読んでいた。2人とも映画監督でありながら俳優らしきこともたまにしていたので、日本語の吹替声優が存在するわけである。ただし、声優さんのお二方も亡くなられているので、この組み合わせでこのドキュメンタリーの吹替は残念ながら叶わない。せめてと思い、画面の字幕を追いながらの脳内再生をしばし楽しませてもらった。

 そんなわけで、この本を知らない人、ヒッチコックを知らない人が観てどう思うかまでは、もはや想像さえできない。ヒッチ先生は見た目も面白いし、ジョークの上手い人だから、きっとすぐ好きになって、たくさん映画が観たくなるようになるはずだ。

 ほかにも、「あれ、『大人は判ってくれない』ってこんなに洒落た映画だったっけ?」なんて、トリュフォーの映画を観直したくなったり。もちろん新撮インタビューに登場する監督のみなさんの映画も。まだ観てない映画がたくさんある。まだまだ勉強が足りない。一生かかっても追いつけないかもしれない。映画を観続けるのがしんどいときもある。でもきっと、そんなときはこのドキュメンタリーが映画を観る楽しさを思い出させてくれることだろう。

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