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〈マスターピース・コレクション~シティポップ名作選〉から『杉真理/マリ・アンド・レッド・ストライプス +1』『りりィ/モダン・ロマンス +1』のライナーノーツを書きました。

 先月からTwitterなどではちらちらとお知らせしておりましたが、初めてCDのライナーノーツ(解説)を担当いたしました。ビクターの〈マスターピース・コレクション~シティポップ名作選〉ということで、1970年代から2000年代までにリリースされたシティポップ系の作品から特に素晴らしく、入手が難しくなっていたものを再発売しようというプロジェクトです。この世界的なシティポップ・リバイバルが続くなか、今こそ聴き直して欲しい17タイトルが選ばれました。今回真鍋が担当したのは、杉真理さんのデビューアルバム『マリ・アンド・レッド・ストライプス +1』と、なんと今回が初CD化となるりりィさんの80年代のアルバム『モダン・ロマンス +1』。どちらも当時の7インチシングルでしか聴けない音源をボーナストラックに1曲ずつ収録しています。

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 杉真理さんは、ビートルズマニアからプロのミュージシャンになった最初の世代であり、ご存知、大滝詠一さんと佐野元春さんとのナイアガラ・トライアングル Vol.2のメンバーでもあります。私個人にとって大きな音楽的ルーツである《ビートルズ》《ナイアガラ》の中間に立たれている杉さんのデビューアルバムの解説によって自分もある意味でデビューができた、ということにはなにか運命的なものを感じずにはおれません。そういえばビートルズもナイアガラも、中高生の頃にお世話になった柏のレコード屋さんに導いてもらったようなものです。近いうちに報告に行かなければ。

 ちょっと細かい話をすると、杉さんのアルバム・ジャケットはビートルズファンの間ではちょっとした語り草になっていて、リンダ・マッカートニーとウイングスが変名でシングルをリリースした時のジャケットとそっくりなんです。というかまるでおんなじ。おまけにアーティスト名義は変名で「スージー&レッド・ストライプス」。こちらは「(スーギー・)マリ&レッド・ストライプス」ですよ。当時のディレクターの川原伸司さんも筋金入りのビートルズマニアですから、ファンがついつい背景を疑ってしまうのは宿命みたいなものです。

 でも、これは本当に偶然の一致なんです。それをこの際ハッキリ書いておくのは杉さんとビートルズの両方のファンとしての責務だと思い、今回改めていろいろと調べ直しました。当時のビクターにある発売日の記録が実際のそれとどのくらいズレているのかを馬飼野さんに訊いたり、リンダのシングルの発売日を藤本国彦さんに確認したり……完全に脱線ネタであったにもかかわらず快くご教示をいただきまして、この場を借りて御礼申し上げます。最終的に決め手となったのは、たまたま神保町のレコード屋さん「タクト」で発見した「アルバムと同時発売だったデビューシングルの見本盤」。そこにはマジックでジャケット右下に実際の流通日が書かれていて、ビクターの記録よりも3日早いだけ。これが間違いなく杉さんのほうが早いという動かぬ証拠になりました。

 りりィさんは、自分がレコードを買うようになってからすぐ好きになったシンガーソングライターです。70年代の日本の音楽シーンでバイバイ・セッション・バンドという、サディスティック・ミカ・バンドティン・パン・アレーと並び称される凄腕ミュージシャン集団を率いていたということで興味を持ったんだと思います。60年代末期に歌舞伎町の噴水(今はただの広場)のそばで詩を書いていたところをプロデューサーに拾われたという、言うなれば元祖新宿系。のちのバンド結成も含めて椎名林檎のスタイルを25年先んじてやった人、だと密かに思っているんですけどどうでしょう? 『日本のフォーク完全読本』という本でアーティスト紹介と初期のアルバム解説の原稿を書いて、さああとはライブハウスへ会いに行くだけだと思っていた矢先に亡くなってしまいました。こうして改めてアーティストの魅力を語り継ぐ機会をいただけたことに感謝しております。

 ちなみに、りりィさんのアルバム解説で引用した伊藤銀次さんの発言は、大滝詠一さんのラジオ番組『Go! Go! Niagara』に銀次さんが山下達郎さんと一緒にゲスト出演した、1975年10月放送の『Niagara特集』からのもので、リアルタイムでバイバイ・セッション・バンドに参加されていた頃の貴重な発言です。他に、りりィさんを見出したプロデューサー寺本幸司さんの発言については『大人のミュージック・カレンダー』のサイトにあるご本人の述懐からのものです。杉さんの解説ではアーティスト本人の発言は、直接ではなく聞き手の方による文章を通してのものでしたので、引用元を念のため明記しておきました。気になる方はそちらもご覧いただければと思います。

 どちらもCDの発売と同時にサブスク解禁となるそうなので、まずは音をお気軽に楽しんでもらえたらうれしいです。もちろん解説はCDを買わなければ読めませんので、ぜひCDのほうもよろしくお願いします。発売日は6月23日(水)。解説目当てという奇特な方、お待ちしております。

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